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2016年4月29日 (金)

Strawberry Meeting

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41年前、小学校へ入学してすぐの頃、一冊の美しい絵本に出会いました。
それが新宮晋さんの「いちご」です。
絵を描くことが大好きだった僕にとって、ページをめくるたびに目の前に広がるあまりにも鮮やかな色彩は、生まれて初めてみるような風景として、とても強い衝撃を与えてくれました。
それ以来、「いちご」は長い間僕のお気に入りの一冊でした。
何度も繰り返し眺めては、各ページに勝手に自分なりの物語を想像したりしたことを覚えています。
少し大きくなって宇宙に興味を持つようになってからは、「たった一粒のいちごのなかに、全宇宙が内包されている」というような、僕にとってミクロコスモスの象徴としての存在となりました。
とにかく、表現をするということ、純粋でダイレクトなイメージの持つ力の大きさ、想像の余地があることの大切さなど、たくさんのことを「いちご」から学びました。
中学生になってギターと出会い、音楽に熱中するようになってからも「いちご」は僕の中のある一部分をしっかりと占めていて、音楽仲間にそのことを話したりしていました。
高校生の頃、住んでいた町に新しく市民ホールができました。
「吹田文化会館メイシアター」です。
地元の楽器店が主催するコンサートに出演するためにメイシアターを訪れたとき、ロビーを飾るオブジェ群に心が釘付けになりました。
誰が作ったんだろうと思ってパネルをみるとそこには「空のイメージ:新宮晋」と書いてありました。
造形作家としての新宮晋さんとの最初の出会いでした。
その後、音楽大学への留学のためにアメリカへ渡り、ボストンという街に何年間か住むことになります。
ある日散歩をしていて、港にあるニューイングランド水族館の前に建つ赤と白色の巨大な彫刻にすっと吸い寄せられるように近づきました。
これもまた新宮晋さんの作品(Echo of the Waves)でした。
なんだか人生の大切な各ステージで、新宮晋さんの作品と出会うような気がします。
ひとつ言えることは、それぞれの出会いは全くの偶然だったということ。
インターネットなどはまだ一般的でなかった当時、前情報は何も無くて、それでも作品の持つ引力に抗うことができずに出会ったという感じです。
そして偶然(必然)だったからこそ、これほどの衝撃を受け、個人として運命的なものを感じたのだろうと思います。
帰国時には、新しくできた関西国際空港で新宮晋さんの作品がまたもや出迎えてくれました。
こうしてすっかり新宮ファンとなった僕は、他の絵本作品も読み始め、それらの作品からもらったインスピレーションをもとに、個人的に作曲をしたりするようになりました。
「Drops(いちご)」「Long Nap(くも)」「I can see the Pond(小さな池)」など。
この辺りのエピソードは、古くから僕を応援してくださっている方々はよくご存知だと思います。
ですが、新宮晋さんご本人にお会いしたり、自分の音楽を届けるなどという発想は全く浮かぶことはありませんでした。
僕にとっては、音楽を始める以前からの憧れのひとであり、それは何か次元の違う遠い存在だったのです。
そうして20年近い時間が過ぎ、去年の5月、まさに「吹田文化会館メイシアター」の開館30周年のイベントとして、新宮晋さんのドキュメンタリー映画「ブリージング・アース:新宮晋の夢」が上映され、ご本人が舞台挨拶をされるということを「偶然」知りました。
そしてまた、いくつかの信じられないような偶然の重なりからご本人にお会いする機会を得たのです。
その日は朝からそわそわして、好きな人に告白する女の子のように(たぶん)、最大級に緊張していました。
そしてちょうど発売されたばかりだった新宮晋さんをイメージした曲の入ったCDを手渡すだけで精一杯で、何を話したのかはほとんど覚えていません。
でもそれだけで大満足で、大きな幸福感に包まれていました。
数日後、新宮晋さんから電話があり、実際にCDを聴いていただいた上にとても気に入ってくださったことを知り、「明日からフランスへ行ってしまうのですが、その前に会いませんか?」と言われた時は、いったい何が起きているのかすぐには理解できませんでした。
その日のうちに初めて新宮さんのアトリエを訪ね、ご本人がアトリエの傍らにある池を「これが小さな池です」と案内してくださった瞬間の興奮と感激は決して忘れることはないと思います。
新宮晋さんは僕が思い描いていたとおりの素敵なひとでした。
時折見せる、トンボやツバメへの優しい視線。
失礼な言い方でなければと願いますが、少年の純粋な好奇心とユーモア、不可能なことは何も無いと信じる心を持ち続けることのできるひとだと思います。

そんなふうに始まった交流の中、新宮晋さんから「一緒に作品を作りませんか?」というご提案があったのです。
それも僕にとっての原体験とも言える「いちご」をテーマに。
それはいまだに現実感をつかむことが難しいほどに、僕にはあまりにも大きな出来事です。
「いちご」は決して子供向きに書かれた絵本ではないと思います。
それでも、少なくとも僕のような子供には、時に不思議な痛みを伴うほどにダイレクトにその世界観は届きました。
音楽でそんなことが実現できないだろうかと願いながら、絵本の各ページに想いを込めて作曲しました。
いよいよ5月14日、この夢は「いちごエクスプレス」として現実のものとなります。
新宮晋さんのたくさんの想い、愛と夢にあふれる素晴らしい舞台になることと思います。
この舞台への準備を通して、たくさんの方々との出会い、一期一会「Strawberry Meeting」が生まれました。
当日まで、「いちごエクスプレス」は成長を続けます。
最後のピースとして、この舞台を見守っていただければこれほど嬉しいことはありません。

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いちごエクスプレス
2016年5月14日(土)14時−16時(13時開場)
兵庫県立有馬富士公園  休養ゾーン「新宮晋 風のミュージアム」水上ステージ
芝生自由席|一般 3,000円(当日券 3,500円)|小学生 1,500円(当日券 1,800円)
お問合せ:チケットぴあ[Pコード:631883 / 0570-02-9999] 風ミュ実行委員会[079-568-3764]

参加ミュージシャン:
清野拓巳 (guitar)
橋爪亮督 (saxophone)
萬恭隆 (bass)
池田安友子 (percussion)
清水勇博 (drums)
MIKIKO (朗読、vocal)

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