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2015年1月25日 (日)

Tales from Book Apple #10 "Room to Move"

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作曲をするとき、たいていの場合タイトルが先に決まります。

印象的な言葉が思い浮かんだり出会ったりして、その言葉を咀嚼し想像を膨らませているうちにメロディーが生まれてくる感じです。

純粋な音楽的発想が曲という形をとることはそれほど多くない。

僕の場合、それは即興演奏へと向うエネルギーとなっている気がします。

どうしてこうなってしまったのか自分ではよく分からないけれど、とにかくまず言葉ありきなのです。

“Room to Move”という言葉は、レイ・ブラッドベリの短編小説のタイトル “Where All Is Emptiness There Is Room to Move”として出会いました。

直訳するなら、「すべてが空っぽな場所には動く余地がある」。

実はこの小説の内容はすっかり忘れてしまって思い出せないのですが、このタイトルだけが、ずっと頭に引っかかっていました。

このことは僕が音楽に向う上での基本姿勢でもあります。

沈黙、静寂があるからこそ音楽に力が生まれるのだと思います。

そして沈黙の持つ大きなエネルギーに匹敵するような音を見据えて、大切に演奏していきたい。

演奏が終われば、音楽は空気のなかに消え去り、曖昧な記憶だけが残る。

あくまで個人的な精神性のなかでのみ存在し、 決して所有したり手を触れたりはできないもの。

音楽は本来そういうものであり、そのことが最大の美しさだと信じています。

街へ出るとあらゆる場所で、あまりにもたくさんの音楽が溢れています。

重なり、混じりあい、どこまでも追いかけてくる音楽は、もはや暴力的でさえあります。

そんな場所には新たな音楽が生まれる余地なんてないと思うのです。

この曲はタイトル曲として、”Room to Move”(VOS 636)にも収録されています。

メンバーは山本昌広(アルトサックス)、田中信正(ピアノ)、千葉広樹(ベース)と僕のカルテット。

大きなジャズフェスティバルの翌日、少し寂しげな横浜での初顔合わせライブ盤です。

そこにはたくさんの”Room to Move”が存在しました。

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