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2014年12月 4日 (木)

Tales from Book Apple #4 Trace "Eiichi"

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音楽を続けていて、たくさんの素晴らしい場所やアーティスト、人々と出会うことができることは、とても大きな喜びです。
そんな中でも、時折ものすごく強い印象や痕跡"trace"を残して行く人たちがいます。
数日間、あるいはもっと長い間、その人の残り香のようなものが身体や思考にまとわりつくような。
その感覚が失われる前に作曲してみようと始めたのが、traceシリーズです。
 この曲、Trace "Eiichi" ではサックス奏者、林栄一さんとの初共演ライブの痕跡を辿ってみました。
林栄一さんの音楽は、レコードやCDでずっと前から聴いていましたし、大好きなプレイヤーでした。
それだけに、僕の中で林さんの音楽にはある確固たるイメージが確立されていたのかもしれません。
初共演のチャンスをいただいた時には興奮しましたし、とても楽しみにその日を待ちました。
しかし実際に同じステージに立ち、共に音楽と向き合った瞬間、僕の浅はかな先入観はことごとく、美しく打ち砕かれていきました。
そこにあるのは、林栄一という存在の放つ圧倒的に純度の高い音。
ある意味でイメージ通りとも言えるような世界観もあるのですが、深さと奥行き感がまったく違う。
そして何より、初対面である僕のギターにごく自然に寄り添い、融合し、時には有機的な起爆剤となって新たな次元に音楽を引き上げてくれる。
そこには僕のまったく知らない林さんの音がありました。
音楽へ対する真摯で深い愛を感じました。
僕はどんなひとと演奏する時でも、同じステージに立つ以上、年齢やキャリア、音楽性さえも超えた部分で、絶対的に対等であるべきだと思っています。
林さんの音は、まさにそのことを大きな存在感で指し示すように溢れます。
その日の即興演奏は、どこか哀しさを感じさせるような美しい音楽でした。
僕にとって最上の音楽は、常に幾ばくかの哀しさを内包しているようです。
僕というフィルターを通して生まれたこの曲は、もしかすると多くの人が期待する林さんの世界からは遠く響くかもしれません。
しかし、僕にとっては初共演の日に受け取った、優しくて、哀しくて、強い、林栄一さんの音楽そのものなのです。

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