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2014年12月26日 (金)

Tales from Book Apple #7 "B-612"

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ライブ終演後などに、「好きなギタリストは誰ですか?」と聞かれることがよくあって、それがどんな文脈からの質問かにもよるんだけれど、返答にすごく困ってしまいます。

「最近読んだ本は?」とか、「記憶に残る風景ってありますか?」って聞かれることはほとんどない。
僕の音楽を作り上げているもとになるのはそういうことの方が大きいと思うんだけど。
決して比喩的な意味ではなく。
実際には好きなギタリストはたくさんいて、嫌いなギタリストを見つけることの方が難しいくらいです。
インスピレーションや影響を受けるのは、もっと身近な共演者や友人(ギタリスト、音楽家に限らず)であることのほうが多いかも。
なので誰かひとりのギタリストの名前を挙げることは、どうしても不正確な気がして抵抗があるんです。
僕がギターを始めたきっかけとなったのは、中学に入ってすぐの音楽の授業。

「クラシックギターを弾いてみよう」というような時間があって、初めてギターを手にした瞬間、身体中をビリビリと走る「これだ!」という感覚がありました。
その興奮は今も鮮明に覚えています。
ギターという楽器との出会いそのものが始まりだったのです。

その時点で誰か絶対的なギターヒーローがいたわけではなく、その後ギターと自分の関係性を巡っていろいろな素晴らしい音楽と出会ってきました。
ジャンルという概念にとらわれたことはなく、音楽をカテゴライズすることの意味は今もよく分かっていません。
音楽を系統立てて聴いたり、知識として受け入れることがどうも苦手なようです。
ですから、自分を例えば「ジャズ・ギタリスト」と位置づけることにはものすごく違和感があります。
できればずっと、ただ僕というひとりのギタリストでいたいと思っています。
それはとても難しいことですが。

子供の頃に読んで、その後の自分の人格形成に決定的な影響を与えた本が何冊かあります。
「星の王子さま」もそんな本のひとつ。

読み返すたび、新たな感動とともに、心の中の奥深い部分から救われるような気持ちになります。

「たいせつなことはね、目に見えないんだよ」

小さい頃、喫茶店なんかに置いてある角砂糖の包み紙を集めていたことがあります。

世界の名所が綺麗に印刷されていて、眺めていると想像のなかで世界中を旅している気持ちになりました。
その包み紙の価値とか、集めることの意味なんて考えたこともなかったけれど、それは僕にとって紛れもない宝物でした。

音楽も同じなんじゃないかなと思います。
意味や価値を求めてしまうと、一番大切な輝きが失われてしまう。

他の誰にも意味はなくとも、自分にとって大切な一輪の花を持っていられるかどうかだけが、本当に「たいせつなこと」。
B-612は、1909年に一度観測されたきりの、王子さまのふるさとの星です。
名前なんてどうだっていいのですが、名前がないと分からないおとなの人のために。

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