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2008年8月11日 (月)

Orange

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いよいよ今回の旅最大の目的だったプロヴァンス地方へと入る。
いろいろ回り道をしたけれど、この地の太陽を浴び、光と色を感じることこそが僕たちを駆り立てたのだ。

オランジュは、かつてローマ帝国の重要な都市として歴史にその名を刻む町。
しかしその旧市街はあっけないほどに、こぢんまりとしている。
閑散とした石造りの路地。
ただ強烈な太陽だけが差し込み、街に光と影のくっきりとしたコントラストを描く。
観光地的な空気はほとんど匂ってこない。
まさに僕好み。

古代劇場を訪ねる。
それは紀元前1世紀末の建造物で、世界でもっとも保存状態のいいローマ遺跡なのだとか。
悠久とも思える時の重みに、ついつい思考が内省的な方向へと流される。
多くの犠牲と弾圧にまみれながらも、この地までその痕跡を残すローマ帝国。
そこには少なくとも人間の意志と生きるエネルギーに満ちた数知れぬ人生があったのだろう。
二千年の時を隔てて、飛行機と車を使ってやって来た東洋人が遺跡にたたずみ、その姿に感嘆している。
おかしなもんだな。

ちょうどその劇場では、小学生くらいの子供たちのコーラスを含めたオペラのリハーサルが始まっていた。
音楽監督らしき男性がしきりに怒声をあげている。
とても恐そう。
最初は遠足気分ではしゃいでいるように見えた子供たちの動きと表情が、みるみる真剣味を帯びてくる。
その歌声はとても美しく古代劇場の空間に響き渡る。
もちろんマイクなどはなく、小さなアップライトピアノ一台での伴奏。
野外であるこのオープンな空間に、これほど豊かに音が響くことにかなりの衝撃を受ける。
まるで魔法を目にするよう。
リハーサルは進み、大人の歌手たちも登場する。
それぞれほんの一節歌うだけだったけれど、歌声はますます朗々と渡っていく。
その音たちは、天へと昇っていくようでもあり、同時に天から降ってくるようでもある。
気がつけば、リハーサルは終了模様で、すでに何時間かが経過していた。
思いがけず、いい経験ができた。
ついている。

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